親子経営 ビジネスモデルの経年劣化

ビジネスコラム

親子経営 ビジネスモデルの経年劣化

  先日の日経新聞に大塚家具が創業の地から撤退との記事が出ていました。埼玉県春日部市の店舗「春日部ショールーム」を5月27日に閉店するという記事でした。

 父親と長女が株主総会において委任状争奪戦を繰り広げたことは記憶に新しいところです。長女が社長に返り咲いてから2期連続の最終赤字となり苦戦が続いています。

 そもそも2009年に父親から長女に社長を交代したとき、すでに大塚家具の業績が頭を打っていました。だからこそ父親から長女に交代し、新しい経営陣による業績回復が期待された訳です。

 どのような企業であろうとメインの事業モデルは放っておくと必ず経年劣化を起こします。絶えず創意工夫を重ね、改良、改定を加えることで事業モデルをなんとか維持させています。

 そのような努力を積み重ねてもなお経年劣化は起こるものです。大事なことは経営者自らがこれに対応するということです。

 経営者が創り上げたビジネスモデルを見直し、見極め、再編、再構築することは経営者の責任です。決して役員や社員に任せて出来ることではありません。経営者自らがオーナーとしてその役割と責任を果たすことが求められます。

 大塚家具の場合、長女が社長になったから業績が悪化した訳ではありません。もともとビジネスモデルが停滞期に入り下降期に移る過程であったに過ぎません。父親が社長を続けていたとしても苦戦を強いられたことは間違いないところでしょう。

 店舗ビジネスはどのような店舗でも一度客足が遠ざかると客足を回復させることは至難の業です。余程の改変、改革が為されない限り回復は難しいと思われます。思い切った業態変化まで視野に入れねばなりません。

 大塚家具はたまたま父親から長女への経営交代がスムーズに行われなかったことで世間に注目されました。しかしながら根本の問題として、業績の劣化が起こっていたことが忘れられています。

 2009年に父親から長女に社長が交代してから恐らく親子の関係性が変化したのだと思います。業績の悪化が止められず苦戦を強いられるなか、親子のコミュニケーションが上手く取れなくなったことが問題を複雑にしたと考えられます。

 すべての会社に於いて事業の見直し、見極め、そして再構築は経営者の責任です。その意味から言うなら、大塚家具の場合、長女が社長になってそれまでのビジネスモデルを変えようとしたことは、経営者として当然のことだと思います。

 創業者が苦労し育て上げた事業、ビジネスモデルが功を奏し企業が春を謳歌することになります。やがて季節が巡るよう、必ず冬が訪れます。大切なことはそのとき経営者がどう対応するのかということです。

 後継者が経営を引き継いだなら経営者として、その責任と役割を果たさねばなりません。次のビジネスモデルを構築するのは後継者である者の務めです。厳しく苦しい状況が続くことでしょうが、やる以外に道が開けることはありません。