親子経営 後継者による「働き方改革」の勧め

ビジネスコラム

親子経営 後継者による「働き方改革」の勧め

 大塚家具のここ一連の報道や記事を目にするたびにとても残念に思うことがあります。今からもう10年近くも前になる2009年に初めて長女が社長に就任しました。その後父親に解任されるまでの5年間、数字だけをみると下降気味であった売り上げを何とか落ち着かせるところまで持ってきたと評価できるのではと思われます。

 そしてようやくこれから反転攻勢に出るぞというときに父親から突然解任されお家騒動に発展してしまいました。一般客を顧客とするビジネスとしては企業のイメージが大事であり、父と娘の経営権争いが話題となるにつれ既存顧客が離れることになりました。

 その後、売り上げの減少が止まらずピーク時の半分にまで落ち込んでしまったわけです。現状のままではさらに業績は悪化するものと思われます。ここに至った原因理由には私も含め諸子百家が多くの自説を述べています。

 どのような企業の後継者もみな同じような事態に直面します。父親が経営する会社に入社し、しばらくすると父親が経営してきた会社に多くの問題があることに気づいてきます。そして一日も早く自分が何とかしなくてはと思い始めます。

 しかし、父親が経営者としているなかで後継者がひとり声を大きく上げたとしても誰も聞く耳を持ってくれません。父親に話しても互いに感情的になり冷静な話しあいができません。そんな悶々とした時間を経て多くの後継者はいつか社長になるわけです。

 そして満を持して社長となった後継者は早速に会社の改革に動き始めます。まさに大塚家具の長女さんもこのようであったと思われるわけです。父親のビジネスモデルを一挙に変えてしまおうとします。

 どの会社もビジネスモデルが経年劣化することは避けられません。上昇していた売り上げがいつしか停滞してしまいその後に下降していきます。大塚家具の長女が初めに社長に就任したころは停滞期から下降期に至るときでした。

 彼女が早急にビジネスモデルの変換を試みたことは経営者としては当然のことだと思います。ではなぜ上手くいかなかったのかということが問題となります。まずひとつは拙速であったということ、父親を含め社員の言うことに耳をかさず独断でことに臨んだことが挙げられます。

 ビジネスモデルの変換という経営の根幹にかかわることを為すには強いリーダーシップは欠かせませんが、独断専行では決して上手くいきません。社員のこころが離れていたなら独りよがりであると言われてもしかたありません。

 また彼女のビジネスモデルそのものにも首をかしげざる負えないところがあるように思われます。社長が大きな音で笛を吹いても役員をはじめ社員の多くが踊ろうとしなかったということでしょう。

 これから社長になるという後継者、または社長になって間もない後継者のかたに私からひとつ提案があります。この間、ここしばらくの懸案であった「働き方改革法案」が国会で審議可決されました。

 これにより中小企業でも2年後からの適用に準備していかなくてはなりません。そもそもこの法案の目的をみてみると、社員の意欲を高め社員それぞれの能力を引き上げるためとあります。

 ややともすると、時短と年休の消化だけがクローズアップされがちですが、ここは先ほどの本来の目的を大事にして、まさにこの「働き方改革」を逆手に取るのでなく順手に取って真っ向から取り組んではいかがでしょう、というのが私の提案です。

 「働き方改革」という御旗のもとで、自社の業務の改善、改革に社員と共に取り組んではいかがでしょう。後継者の方が中心となってプロジェクトチームを作り取り組んではいかがでしょう。

 社内の業務改善、改革を進めることは業務の見直し見極めることです。そして業務の再設計をすることになるわけです。これこそが業務の変革でありイノベーションです。それが上手くいけばビジネスモデルの変革になりビジネスモデルの変換にまでいく可能性があるわけです。

 それを是非、後継者の手で成し遂げて欲しいというのが私の提案です。これを実行するには強いリーダーシップが必要です。それ以上に役員をはじめ多くの社員の協力が必要となります。だからこそ後継者にプロジェクトチームのリーダーになって「働き方改革」を進めてもらいたいと思っています。

 後継者が社長になり、どうせやらねばならないことを「働き方改革」の御旗のもとで社員を巻き込みながらイノベーションを起こすことができればそんな素晴らしいことはありません。是非やって欲しいと思います。