親子経営 社長に正義感が無い

ビジネスコラム

親子経営 社長に正義感が無い

 この度の日大アメフト部員による「悪質プレー」問題の経緯をみて考えさせられました。この問題の本質は人の上に立つ者の資質の問題に他ならないと思います。この日大アメフト部の監督のおよそ人の上に立つ者らしからざる資質こそが問題でありました。

 この監督にとっては何よりも試合に勝つことが唯一絶対の価値観であり、その目的を達成するためなら何をしてもよく、手段は択ばないのだと思われます。試合に勝つためには相手の主力選手にケガを負わせることも辞さないと考えているようです。

 可哀そうなのはそういう人物を監督に持つ部員たちです。彼らは至極真っ当な普通の青年たちです。ましてや日々厳しい練習に耐えスポーツマンシップを持つ若いスポーツ選手たちです。その彼らにこの監督が強いたことは「不正」を行えということだった訳です。

 試合に勝つために自分たちと同じスポーツ選手にケガをさせろと言っている訳です。そう指示された選手の心情を察するにそのような指示を強いたこの監督に怒りを覚えずにはいられません。自分の可愛い部員にそんな不正を平気でさせることなど決してあってはなりません。

 すべからく人の上に立つ者はその姿勢、人格が問われます。人の上に立つ者に「正義感」が欠如していたなら、下の者たちに戸惑いと混乱を引き起こさせます。まして上に立つ者から不正を強要されることになれば、下の者の苦悩は計り知れません。今回の日大アメフト部の問題はまさにこういう話に他なりません。

 ここで中国古典『大学』より一節ご紹介します。
「国、利を以て利と為さずして、義を以て利と為すと謂う」(『大学』伝十章)のがあります。私なりに訳してみますと、国は財物が豊かであることが利益ではなく、正しき行いが為されることこそが利益である、ということでしょう。

 会社でいうなら、社長が会社の利益ばかりを追い求めようとして社員に無理難題を押し付けることより、会社が公器であることを理解し会社のあるべき姿、進むべき道を正々堂々と社員とともに歩くことこそが会社の本当の利益となる、ということでしょうか。

 昨今よく起こる企業不祥事の本当の原因は社長の資質に負うところが非常に多くあります。端的に言うなら社長に仁徳が無く、もっと言うなら社長に正義感が無いことが原因の根本であるということです。

 社長に正義感が欠如していたなら、とんでもないことが当然起こります。企業が起こす不正行為は当然犯罪行為になります。社長が社員に不正行為を強要することなど本来あってはなりません。

 昨今起こる企業不祥事の多くは社長自身が関わったか首謀者です。不祥事が表面化した時点で事件となり犯罪行為が明るみになります。なかには社長と共に積極的に不正を行った社員もいるでしょうが、多くの社員は社長の指示に困惑し戸惑い思い悩むのだと思います。

 企業のトップだけならずすべての人の上に立つ者に言えることです。トップに倫理観が無く、特に正義感が欠如していたなら、直接的に被害に遭う人たちは勿論のこと、その組織に属す多くの人たちを苦しめることになります。

 今回の日大アメフト部の問題は監督が謝罪と辞任を表明しましたが、まだまだ収束する雰囲気ではありません。監督自身の言葉に誠意と誠実さが全く感じられず、余計に不信感を持たれる結果になっています。

 結局、最後までこの監督はご自分の「悪質プレー」への指示を認めないのかもしれません。これまでしてきたことを含め今回の行為も含め、いずれは全てご自分に反ってくることになると思うのは私だけではないでしょう。