親子経営 繁盛と繁栄の秘策 子供がすべき7つのこと 3   社員との距離感を考える  (2015年9月2日)

ビジネスコラム

社員との距離感を考える

後継者としての経験が無い人には社員との距離感という言葉自体に違和感を抱くのかもしれません。しかし、後継者にとっては社員との関わり方というのがとても難しく思われるひとつなのです。社員とどのような関係性を持つべきなのかといつも考えてしまいます。

後継者といえど現場に入ってしまえば社員との距離感などと言っておれないのでは、また後継者と社員との距離感など考えず社員と一体となって仕事をするのが理想なのでは、などと思われるかもしれません。

私自身がかつて後継者のときそう思って現場に入ったものでした。みんなと同じ条件で同じ仕事をみんなと一緒にやらせてもらおうと思っていたものです。しかし時間が経つにつれ、なにか違うぞと思うようになりました。

後継者である私が見る目線や見方と社員の目線や見方が微妙に違っていたりします。同じ業務をこなすのに考え方、進め方、そして速さが違ったりします。同じ問題を対処するにも考え方や方法が違ったりします。

自分は社員と一緒に同じように仕事をしたいと思っているのに、彼らとの間に僅かに違和感が生じています。その理由が分からずとても悩んでいました。そんなあるときふと気が付きました。

初めから彼らと自分とは立ち位置が違うのだと、組織上のポジションや役職ということでなく、会社のオーナーであり次の経営者であるという自分の立ち位置と社員である彼らの立ち位置とでは全く違うのだと気が付いたのです。

当然のことですが、社員の方は初めからその違いが分かっています。後継者である自分だけがそのことに気付いていなかったのです。彼らにすれば自分たちは自分たちに与えられた役割と責任を果たしているのだから、あなたは後継者として役割とその責任を果たしてくれればいいというところでしょう。

また、学びはじめの論語から引用します。「子曰く、君子は器ならず」とあります。ようするに君子は型にはまったものではなく、型にはまらない無限の大きさ可能性を持つものでなければならないとでもいうことでしょうか。

会社やあらゆる組織において、それぞれの部署長や役員はそのポジションに与えられた役割があります。それが今言うところの「器」です。そしてそれぞれの「器」に与えられた機能と役割をしっかり果たすことを彼らに求めます。

それに対し、経営者はそのいわゆる「器」ではありません。またそうであっては決してならないのです。「器」という型にはまっただけでは経営者としての役割と責任が果たせません。型にはまらずもっと広く大きくものごとを捉え、大胆により創造的に行動することが望まれます。

人間として度量が大きく包容力がある経営者にはとても魅力があります。社員が後継者に求めているのは、自分たちと同じ仕事を上手にこなして欲しいということではありません。

将来、後継者が立派な経営者となって自分たちの会社を素晴らしい職場としてくれることが一番望まれていることです。後継者が社員との距離感を感じて当たり前のことです。初めから互いの役割が違い、責任の大きさが違うのですから。