親子経営 繁盛と繁栄の秘策 子供がすべき7つのこと 5   率先垂範を心がける  (2015年9月16日)

ビジネスコラム

率先垂範を心がける

経営者が業績不振の責任を自分以外の社員のせいにするのを時たま目にすることがあります。自らの不徳を省みることなく幹部たちのリーダーシップの無さをあげつらうのを耳にすることがあります。

そういう経営者が打つ手の一つが社員教育であるのが周知の事実です。セミナーやトレーニングを受ける社員の心からは「俺たちより自分の教育をやり直したらいいのに」とたくさん聞こえてきそうです。

またそういう経営者の多くが「社員たちはどうして俺の思うように動かないんだろう」と心で思っています。自分の想い通りに動いてくれない社員たちをまるで裏切り者を見るような顔で見ています。

論語の一節に「子の曰く、其の身正しければ、令せざれども行わる。其の身正しからざれば、令すと雖ども従わず。」とあります。

自分自身が人間として生きざまが正しかったなら命令などしなくても部下がその想いを慮って行動してくれるけれど、自分自身の行いが誤っていたなら命令をしたところで部下は誰一人従うものはいない、ということでしょうか。

私自身が経営コンサルとしてオーナー企業経営者と後継者にスポットをあてたプログラムを行っているのも、まさにこのことを実体験の多くから確信をしているからに他なりません。どんな組織もすべてトップ次第で良くも悪くも変化することを目の当たりにしてきたからです。

オーナー企業経営者と後継者が何よりもまず自分自身を省み、常に自分の立場を意識をし、己の修養に努めることこそが肝要です。経営者と後継者は己の二つの目で社員を見ていますが、社員はその数の倍の目で日々経営者と後継者を見ています。

中国儒教の経典「四書」のなかの「大学」では「修己治人」について書かれています。人の上に立つものの第一義として「己を修める」ことを教えてくれています。そのうえで人の上に立つことが求められています。

「大学」の一節、「身を修るを以て本となす。その本乱れて末治まる者は否ず。その厚かるべき者薄くして、その薄かるべき者厚きは、未だこれ有らざるなり。」

上に立つ者は自分の修養を根本とする。その根本ができなくて下の者がいう事を聞くはずがなく、上手く運営ができているはずがない。本来気遣うべきところを軽視し、ほったらかしにしていながら、大事なことが勝手になされているというようなことは決してない、とでもいうことでしょうか。

後継者はまだまだこれからが本番です。父親に代わり経営者となるまでにやるべきことはたくさんあります。その最も大事な事が「己を修める」ことを知ることです。そして己を律することを覚えることです。

若い後継者の方からよく聞かれます。「人の上に立つにはどうしたらいいでしょうか」「私に経営者が勤まるでしょうか」「どうしたら部下が付いてくるでしょうか」などです。

そう聞く彼らの不安気な顔を見ながら私が言います。「大丈夫です。後継者なら誰もが思うことであり誰もが通る道です。素直な心でたくさんの人から多くのことを学んでください。与えられたポジションで精いっぱいの努力をしてください。あなたの働く姿を周りのみんなが見て、リーダーとして相応しいか判断しますから。」

以前にも書きましたが、経営交代は企業にとってリスク以外なにものでもありません。社員は勿論のことながら、取引先も含め周りが後継者に注目しています。後継者次第で今後の取引の行方が左右されることがあります。

後継者がそういう立場にあることを十分認識したうえで日々の仕事に従事することが求められます。周りの信用と信頼を得ることが出来るよう、まずは何事も率先垂範の気構えで望んで欲しいものです。