親子経営 繁盛と繁栄の秘策 父親がしてはならない7つのこと 3   独善の戒め  (2015年10月21日)

ビジネスコラム

独善の戒め

経営者は得てして自己中心的になりがちです。経営の全責任を負って日々様々な経営判断をしなければなりません。自分を中心に、自分を軸にして考える習慣が付いています。それが上手くいけばカリスマ経営者と呼ばれ、下手を打てばワンマン経営者と呼ばれます。

ワンマン経営者がすべて悪いということではありません。世の中にはオーナー経営者がリーダーシップを取れず、任せるべきでないことまで社員にすべて任せてしまっている経営者がいます。

なかには事業が上手くいっていないことを経営者が分かっていながら、社員にすべてを任せているからと言って、何も手を打とうとしないオーナー経営者がいます。事業の見極めそして見直しは経営者にしか出来ないにも関わらず、座して静観しています。

そういう経営者なら私はワンマン経営者の方が余程ましなのではと思っています。オーナー経営者が会社の所有者として、本来の責任と役割を果たさずして何とするのかというところです。

ワンマン経営者が批判される理由はいくつかあります。まず、あまりにも独りよがりであること、何事にも自己中心的、独裁的であること、自社と個人の利益を追求しすぎること、そして自分と身内親族に甘いことなどが考えられます。

論語の一節に「君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る。」とあります。私なりに読み解きますと、「君子は何かをしようとするとき、人間としてそうすることが正しいのかどうかと考えて行動する。小人はそうすることが自分にとって得か損かを考え行動する。」ということでしょうか。

会社経営が利益の上に成り立つことは当然のことながら、会社経営の目的が利益の追求というのでは今の時代到底受け入れられません。企業が法人である以上、社会的存在、公器としての責任と役割が求められます。

更に言うなら、企業には社会的正義の実現を担う責任があるとも言えます。それ故に経営者が自社の利益だけをがむしゃらに追い求めることや個人の資産を増やすことだけに固執することには社内、社外からも抵抗や批判の噴出が予想されます。

さらに論語から一節、「それ仁者は己が立たんと欲して人を立て、己が達っせんと欲して人を達す。」と、あります。これも私なりに解釈いたしますと「人間は自分がこうしたい、こうなりたいと思うことを自分より先に人をして実現させるものだ。自分が望むところのことを人に勧め導くことだ。」と、なります。

ワンマン経営者がカリスマ経営者に変わる瞬間がここらにあるように思われます。経営者が自社の利益だけを考えるのでなく、他社のこと、業界のことそして世の中のことまで考えた上での事業展開を推し進めたとしたならどうでしょう。

常に他社あっての自社、業界あっての自社、世の中あっての自社という観点から事業経営をしたなら、自ずと事業の発展と成長が実現されるのではないでしょうか。そのような企業を世の人々が放っておくはずがありません。

オーナー企業経営者が独善に過ぎることは百害あって一利なしです。オーナーとして本来の所有者責任と役割を正しく発揮していただくことがまさにオーナーシップの発揮に他なりません。