親子経営 繁盛と繁栄の秘策 父親がすべき7つのこと 3  社員と子供の関係性に留意する (2015年7月19日)

ビジネスコラム

社員と子供の関係性に留意する

オーナー企業では親が子供に会社を譲ることが一般的であり、順当な経営継承だと考えられます。ただ、経営幹部や社員の心情に配慮が必要です。後継者である子供の悩みのひとつが経営幹部や社員との人間関係をどのように築けばいいのかということです。

経営者である親が自分の子供に会社を譲る際に、誰に遠慮がいるものかと考えるのは当然のことと言えます。創業経営者であればなおさらそう思うはずです。跡を継ぐ子供の立場になるとそう簡単には考えられません。

親とともに苦労をしてきた経営幹部や古参社員がたくさんいる会社であればなおのこと、後継者である子供にとって彼らとどのような人間関係を築くかが重要になり、ややもすると大きな心労の原因になります。

したがって、出来るだけ経営幹部や古参社員に子供がスムーズに受け入れられるよう配慮をしてやることがとても大切です。これは決して子供を甘やかそうということでなく、それほど彼らとの人間関係構築が容易なものでなく、とても難しいのだということです。

あるデザイン会社の話です。A社は創業50年を超える社歴を持ち、小規模(社員数15名)ながら優良取引先数社を抱え、安定した業績を上げています。現社長は創業者の義弟で78才になります。

後継者には長男がいたのですが、事業で多額の負債を抱えたため社外に放り出されています。そのため三男が次の後継者と目されています。現社長は長らく先代の下で専務職に就いていました。

現在の社員のほとんどが先代の下で一緒に働いていました。その当時の専務の綽名が「なにも専務」だといいますから、彼らと現社長との今の人間関係が想像されます。互いに上手く気持ちが切り替えられず現在に至っています。

三男は営業部長として社長と社員たちの間に立って孤軍奮闘していました。彼は小さい頃から人懐こく優しくて気配りができる男の子でした。現在もとても繊細なところがあり、特に父親と社員との人間関係が上手くいくようにと気を使う毎日でした。

それに対し父親である社長はプライドが人一倍高く人の言う事を全く聞きません。会議で社員を他の社員のまえで平気で叱りつけてしまいます。そのような社長の言動に誰よりも三男が悩んでいました。

何度も社長に言動に注意してくれるよう話すのですが、聞く耳を持ちません。そんな状態が何年か続いた揚句、三男がうつ病を患ってしまいました。現在は休職を余儀なくされ自宅療養中とのことです。

父親である現社長と社員との人間関係はいい悪いは別にして、それなりに長年の時間をかけた関係性であり、ある意味バランスがとれていると言えます。そこに新たに後継者としての意識を持った子供が加わるのですから、関係性に変化が生じます。

子供が後継者としての立場をつくることは決して簡単なことではありません。そのことに父親である経営者が少し留意をして、後継者である子供と社員との関係性を見て欲しいのです。