親子経営 繁盛と繁栄の秘策 父親がすべき7つのこと 4  取引先と後継者の関係に留意する (2015年7月24日)

ビジネスコラム

取引先と後継者の関係に留意する

仕入れ先、売り先などの取引先にとって、次の経営者となる後継者がどのような人物であるのかが気になるところです。また、後継者の人間性や仕事におけるさまざまな能力がどうなのかなどが重要な関心事となります。

彼らにとって取引先の経営交代はリスク以外なにものでもありません。現状が上手くいっているなら尚更経営交代は彼らにとって決して好ましいことではないのです。経営交代に対する彼らの不安感や不信感を払しょくしておく必要があります。

よって、事前に後継者が積極的に取引先と関係を深め、彼らの信頼と信用を得ることが出来るのであればこの上ない話です。経営者である父親がこれらのことを認識し、後継者の社内でのポジションを考慮することが必要です。

かつて私が父親の経営する建設資材販売商社の後継者であった頃のことです。大学を卒業し父親の会社に入社した私は、一日も早く父親に代わって経営者になろうと考えていました。

私は父親が40才のときの子供でしたので、私が入社した時には父親は64才になっていました。私は父親が70才になったら経営を代わってもらおうとひとり自分で心に決めておりました。

そう考えるとあと6年の間に経営者となるべく準備をしなければなりません。まずなにから始めていくべきなのか一人悩んで出した答えが、社員の信頼を得ることでした。社員の信頼を得るにはどうしたらいいのかと次に考えました。

そうして出た答えが、取引先の信頼を得ることで社員の私を見る眼を変え、社内での私の立場を築くことができるのではということでした。次の日から私は営業マンのひとりとして動き始めました。

取引先のなかでも顧客である売り先、売り先のなかでも社員にとって最も難しく、しかも最も企業規模が大きいところを担当しました。相手先経営者にとっては必要な取引先の後継者が営業に来たということでもあったのでしょうが、とても可愛がって頂き大きく取引を伸ばさせてもらいました。

気を良くした私は次に難しいけれど大事な取引先をいくつか担当していきました。それによって社員の信頼を得たかどうかは分かりませんが、私自身が大きな自信を得ることができました。当時の私にとって自信を持てたことがなによりも大きなことでした。

私の父親は私が入社後、私になんの指示もしませんでした。どの部署で何をしろといったことは一切言いませんでした。仕方なく私は私の社内でのポジションを自分で考え自分の立場を自分で作っていきました。

大きな会社であれば後継者の育成はそれなりのプログラムがあるのでしょうが、中小企業の場合、経営者である父親が考える必要があります。子供のひととなりや性格、能力などを考慮しながら一段一段ステップを上げていくようじっくりと育てて頂きたいところです。