コンダクター (2011年10月7日)

敬天愛人箚記

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今日、お世話になっている先生から、ご自分が出演される年末恒例のベートーベン第9のコンサートへのお誘いがありました。昨年9月に上京して、良かったと思うひとつが、連日のように開催されているクラシックコンサートの多さです。在京オーケストラは演奏レベルが高く、チケットが比較的安いのが魅力です。私の家から歩いて行ける上野の東京文化会館へは何度も出かけました。第9のお誘いはもちろん喜んでお受けしました。

私はクラシックの作曲家のなかで、ベートーベン、ブルックナー、マーラーが特に大好きです。なかでもベートーベンを一番よく聴いています。CDのベートーベン交響曲全集は50種類以上持っています。指揮者によって同じ曲が少しずつ違うのです。同じ指揮者の演奏でもオーケストラが変わると、また違います。そして、同じ指揮者でも、若いころと晩年では、また微妙に違うのです。とてもマニアックな話になりました。

よくビジネス書などで、経営者の仕事はオーケストラの指揮者と同じだと言われます。100人近い団員をまとめ、ひとつの音楽を創りだすことは、経営者が社員をまとめ会社を経営することと、多くの共通点が確かにあります。著名な指揮者が一流オーケストラを客演指揮する場合、リハーサルは2,3回だといいます。へたをすると1回で仕上げなければならないこともあると聞きます。そして本番で、リハーサル以上の演奏をいかに引き出すかが指揮者の腕の見せ所になります。オーケストラが一流であればあるほど、ひとりのわずかなミスが大きな音の乱れとなり、不協和音になります。非常に厳しい世界です。

もし、経営者が指揮者のように、社員一人一人を注意深くケアーしフォローできたならば、その会社は間違いなく右上がりの成長を遂げるでしょう。オーケストラでは一人のミスが全体のハーモニーを壊してしまいます。本来、一般の会社もそうあるべきなのでしょうが、一人の社員の不出来が不協和音として聴こえないところが、問題なのでしょう。社内のモチベーションが低く、業績の悪い会社では、一人のささいなミスなど何ら目立つものではありません。もし、社内のモチベーションが高く、業績が良好な会社なら、一人の小さなミスは、大きく目立ってしまいます。社長という指揮者のもとで、情熱のこもったハーモニーを奏でることができたなら、素晴らしい会社だと言えるのでしょう。

では、経営者はどうすればいいのでしょう。今から一つの方法をお話しします。もし、あなたの会社が小人数の会社であるなら、あなた自身がファシリテーターも務めることです。あなたがファシリテーターとなり、社員とのミーティングを数多く持つことです。社内の様々な問題をテーマごとに社員に一つ一つ考えさすことです。電話の対応、客との対応、売上の話、利益の話などテーマはいくらでもあります。それらの問題を一つずつ、丁寧に社員とともに問題のありかを明らかにし、どう対処すべきかを話し合うのです。社長は自分の意見を言わず、ファシリテーターとして、ミーティングの進行役に徹することです。社員自らが考え、社員自らが行動するよう、社長は手助けをするのです。小さな会社ほど、社員一人一人の力をもっと生かすべきですが、えてしてワンマンな経営者が多いのも事実でしょう。社員を信頼し信用して、彼らの能力を1%でも多く引き出すのが、指揮者として、社長の仕事でしょう。

あなたの会社が大会社なら、会社のなかでファシリテーターとして使える社員を養成することです。かつてGEがやったと言われるワークアウトをモデルとして、グループコーチングを導入することです。大きな会社も小さな会社も基本は同じです。社長という指揮者のもとで、一糸乱れぬ情熱的な演奏ができるかどうかでしょう。人が多ければ多いほど、上手くいったときのハーモニーはとんでもなく素晴らしいものになるでしょう。