決断 (2011年9月3日)

敬天愛人箚記

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会社経営において、経営者は決断せねばなりません。日々、判断をせまられる問題が次から次へと起こります。経営者が決断しなければ、問題は先送りされ、何ら解決されません。経営者が失敗を恐れ、決断を先延ばしすることは決して許されません。優柔不断なトップリーダーは部下を不安に落とし入れ、事態を悪化させるだけです。結論を出すまで適当な時間をおくこと、間を取ることは大切ですが、あまり時間をかけ過ぎ、時期を逸してはなりません。判断材料や情報を十分収集し、様々な角度から考察し、納得のいく結論を見出し、最後に決断します。そうして決断したなら、即実行に移ります。そして結果はすべて決断した経営者の責任です。経営とは経営者の決断の繰り返しだとも言えます。

経営者であったとき、私はたくさんの決断を繰り返しました。結果、成功事例もあれば、失敗もたくさんありました。振り返ってみると、一番の間違いは、失敗した事実をわざと見過ごしたことです。経営者の決断すべてが正しいはずがありません。なかには大きな失敗もたくさんあるはずです。大切なことは、失敗をひとつひとつ丁寧に検証することでした。何故失敗したのか、原因と理由を明らかにしなければなりません。そのうえで、再度同じ失敗を繰り返さないよう手を打つ必要があります。

日本の企業の特性のひとつに、失敗をタブー視するというのがあります。失敗を忌み嫌うという意識があり、出来るだけ早く処理、処置してしまいたいと考えます。本来なら、失敗に至る原因、理由を詳らかにするべきであるにもかかわらず、極端な場合には、失敗そのものが無かったことにすることすら、往々にしてあるようです。これは日本の文化そのものであるかもしれません。江戸時代の武家の在り様を考えると、これに近い出来事が多くあったのではないでしょうか。「お家の大事。」「詰め腹を切らせる。」「臭いものには蓋をする。」等々の言葉からもいろいろと推察できます。組織にとって不都合があれば、早々に処理し、無かったことにするのが、どうやら日本の伝統のようです。

アメリカの社会では失敗の概念が少し違うようです。物事を為すにあたって成功と失敗は起こるべくしてなる事象であり、それぞれに原因と理由があると考えます。成功に至るプロセスと同じように失敗に至るプロセスも重要視します。アメリカでは失敗者に寛容な印象があります。しかし、実は失敗者の活かし方を知っているだけなのです。失敗者の経験と知識を次に生かそうとする合理的な習慣があるのです。

世の中で一番最悪なリーダーとは、決断しないリーダーです。失敗を恐れるあまり、いつまでも決断しないのです。決断しなければ失敗することはありませんが、成功もありません。失敗の反対語は成功ですが、成功の反対語は失敗ではなく、何もしないことかもしれません。決断しないこと、行動しないことこそ失敗だと言えます。

企業にとって緩やかな成長は好ましいものです。そのためには、失敗を恐れず、果敢に新しいことに挑戦し続けねばなりません。そして失敗に学ぶことを躊躇してはなりません。経営者は失敗から教訓が生まれることを理解し、常に勇気を持って決断せねばなりません。