経営者のコーチング (2011年10月4日)

敬天愛人箚記

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私が経営者であったとき、さまざまな場面で指示を求められ、判断を求められ、日々、決断しなければなりませんでした。経営者なら当たり前の日常の話です。あの日々を思い出すたび、誰か心から信頼できる相談者やアドバイザーがいたら、どんなにか良かっただろうにと思わずにいられません。そのうえ、コーチがついていればなおよかったのにと思います。

経営者に相談者やアドバイザーがいたなら、決断を下すにあたり、検討し考察する時間を持つことができ、間をおくことが自然とできます。また、相談者に話を聞いてもらうことで、冷静になり平常心を取り戻すことができ、アドバイザーに助言を求めることで、様々な選択肢を持つことができます。そして、時間の余裕と考える場を持てたことで、自分なりに問題の本質を見極め、自信をもって解決策を決定することができます。経営者が拙速に決断を下すことは、大きなリスクを伴います。そんなとき、少しの間をもつことはとても大事なことです。私は私の拙速な判断で苦い思いを何度もしました。即断即決を求められるときも必ずありますが、大抵は一晩くらいの余裕はあるものです。

プロスポーツ選手にプロのコーチがついているように、プロである経営者にプロのコーチがつくことは、何ら不思議なことでなく、とても合理的な話です。経営者のためのコーチとは、何をするのでしょうか。経営コンサルタントのように懸案事項に対する解決策の提案をするのでもなく、経営アドバイザーのように助言をするのでもありません。コーチの仕事は、経営者がもともと持っている資質や能力を引き出し、様々な潜在能力を開かせることにあります。コーチは経営者の人間形成や人間的成長を支援し、経営者がより冷静に的確に経営判断ができるよう、人間的下地を作るトレーニングをします。会社における問題の本質並びに根本原因が何で何処にあるのかは、経営者が一番よく分かっています。コーチは経営者とのコミュニケーションのなかで、自然と経営者が答えにたどり着くようお手伝いします。そして、どう行動すべきかも、経営者自らが気づくようにします。経営者の頭の中には、すべての問題の本質と解決策が入っているものです。経営者は意識的あるいは無意識のうちにトラブルを避けているのです。経営者も人間ですから、面倒な厄介事は後回しにしたいのです。経営上の人、物、金の問題すべてをどうすべきか、実は分かっているのです。ただ、それらを実行するには、とてつもないエネルギーを必要とするのが分かっているので、やりたくないのです。コーチはそれを明らかにします。そして、経営者自らが、それに気づき自ら行動するよう促します。経営者とコーチの言葉のキャッチボールが経営者に気づきと行動をもたらします。

多くの組織は頭から腐ると言われています。いくら優秀なメンバーがたくさんいても、トップに器量が無ければ、ただの烏合の衆でしかありません。逆も真なりで、平凡なサラリーマンの集まりだと思っていたのが、社長が変わったとたん、エリート集団に変わっていた、なんてこともあります。組織はトップ次第です。トップにこそ優秀なプロのコーチをつけ、プロの経営者になってもらわねばなりません。