ビジネススクール考 (2011年6月29日)

敬天愛人箚記

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昨年春以来、暇にあかせてビジネス書、経済書を読みました。400冊以上は読んだでしょうか。つい最近読んだ本に大変感銘を受けました。ハーバードの「世界を動かす授業」ビジネスエリートが学ぶグローバル経済の読み解き方(徳間書店)というサブタイトルの付いた本です。作者はハーバードビジネススクールの教授リチャード・ヴィートーです。この本を読んだ瞬間、すとんと頭に落ちてくるものがありました。今の世界経済の状況、日本経済の推移と現況が、いとも簡単に把握することができ、日本が今後どうあるべきかが明らかにされています。幾多の本を読んでも、今ひとつ腑に落ちなかったことが、嘘のように単純明快になりました。こんな素晴らしい授業を直接その場で学ぶことができた学生たちを、とても羨ましく思いました。

今私自身、東京のビジネススクールに通っています。基礎科目をやっと終えたところです。私がビジネススクールに通う目的は二つありました。一つは、何故、私が会社経営に失敗したのかを、学問として経営を学ぶことで明らかにする為でした。もう一つは、会社経営に失敗したことですべてに自信を失くしてしまい、ビジネススクールで学ぶことで少しでも自信を回復できたらとの想いでした。当初、大学が開設したビジネススクールか、ビジネススクール単体として運営されているところへ行くか迷った末、入学時期が比較的融通がきき、すぐに学び始めることができるビジネススクール単体で運営されているところへ通い始めました。基礎を終えただけの私が言うのは適当でないかもしれませんが、なにか少しものたりないのです。授業は学生たちに考えさせ、出来るだけ多く発言の機会をつくり、3時間の授業が短く思える程、充実したものです。経営大学院なので2年間学べばMBAが取得可能です。講師陣は、実務経験が豊富で、実戦的知識があり、臨機応変さがあります。私は大学が開設したビジネススクールに通ったことがないので、どちらがどうと言えません。おそらく互いに一長一短あるのでしょう。

ただ、なんとなく感じているのは、ビジネススクールはアメリカがオリジナルであって、日本のものはまだ真似ごとではないかということです。法科大学院いわゆるロースクールも一時こぞって開校されましたが、その機能、役割が現在充分いかされていないと聞いたことがあります。これもアメリカのロースクール制度を導入したもので、まだ日本にしっかりと根づいていないのかもしれません。

最近、日本でハーバードやスタンフォードのビジネススクールの教授が書いた本が出版されたり、テレビやインターネットで授業が流されています。それらの本や授業がとても面白いのです。難しさを感じさせず、解かりやすい言葉や手法で、学生に伝えています。その上、読む者、聞く者、視る者に多くの感動を与えています。初めに紹介したハーバードビジネススクールのヴィート―教授の最終講義が終わった瞬間、「教室全体からは、割れんばかりの拍手が沸き起こり、クラス全員はスタンディング・オベーションで授業への感謝を示しました。生徒の瞳には涙さえ浮かび、またその拍手は止むことなく、こんなに長い感謝を示す拍手はあったろうか、と思うほどでした。」(あとがき・共著 仲條亮子)とあります。