後継者のコーチ (2012年1月25日)

敬天愛人箚記

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日本には数百万の会社があります。それは数百万人の社長がいるということです。そして、数百万人の後継者がいるということです。経営トップをコーチする重要性はすでに書きましたが、それ以上に数百万人の後継者をコーチすることが、より大切で必要なことかもしれません。経営者は自らのため会社のために、自己研鑽にに励みます。しかし、後継者のための育成プログラムや育成システムを重要視する企業は,そう多くありません。

組織においては、組織存続のため、後継者選びや育成のプログラムが用意され、後継者に準備と育成期間が与えられ、後継者がスムーズに引き継ぎと運営が出来るように配慮されるのが当然の話です。本来、企業こそ、円滑な継承が行われるべく、このような継承プログラムがなければなりません。企業各社がそれぞれに独自のプログラムを持ってしかるべきです。継承が上手く進まないことで生じる不利益は、こうしたことで避けられるにも拘わらず、現実には様々な問題が起こっています。

昨今、トップによる不祥事が相次ぎました。オーナー経営者である大王製紙の会長による事件、そしてサラリーマン経営者であるオリンパスの事件です。どちらも問題の本質は、経営者の資質にありました。経営者が己を律する力を持っていたなら、起きることのない問題でした。大王製紙の場合、後継者であった時期の育成に問題があるように思われました。一方、オリンパスの場合、後継者の選び方、育て方といった後継者育成プログラムの不備にあったと思われます。どちらも後継者育成という意識の欠如と育成プログラムの内容の不備が指摘されます。

さて、中小企業の多くは、親族が継承者です。大企業と違い、後継者選びは比較的容易に決まります。しかし、後継者をどのように育てればいいのか分かりません。父親が社長で息子が後継者というのが多いのですが、父親が息子を次代の経営者として自ら育てるということは、とても難しいものです。そこには、父と子の相克が存在し、親子の愛憎が大きく影響します。これら数百万人いると思われる後継者のうち、何人が優秀な経営者に成り得るのでしょうか。想像するだに恐ろしい思いがしますが、自他ともに認める優れた経営者に成り得るのはごく僅かだろうと思います。それゆえ、後継者にこそ専属コーチを付けるべきだと考えています。社外の心から信頼できるプロのコーチの出番です。コーチは後継者の心理的不安を取り除き、継承までの準備期間に何を為すべきか、ともに考え、答えを見出させます。そして、継承までの目標を明確にし、実践する手助けをします。

企業はトップ次第です。いくら優秀なスタッフが揃っていても、無能なトップがいては為すすべがありません。企業にとって、次のトップである後継者の出来、不出来が重要であることは言うまでもありません。後継者にこそ、社内の人間ではなく、外部の信頼できるエグゼクティブ・コーチを付けることです。コーチは後継者を鍛え、会社の行く末を安心して任せることができるよう手助けします。