親子経営が真価を発揮するとき

ビジネスコラム

親子経営企業には自分たちには気づかない強みがいろいろとある。その強みを活かし、強みを発揮することで親子で経営する真価が現れる。多くの親子経営企業の経営者がこの真価を見出せず不振に喘いでいる。

例えば、親子経営企業での親から子への経営交代は20年から30年に起こる。他企業ではもう少し早い周期で経営交代が為されている。企業にとって2、30年というのはビジネスモデルがちょうど経年劣化を起こし始めている時期と符合する。

経営者自らが自分のビジネスモデルを変革していくことはなかなかに難しいことだ。後継者が自らの役割と責任を自覚し、先代のビジネスモデル変革、改革に取り組むことで企業の継続と成長が見込まれる。

これを上手く成し遂げることができればさらに次世代へと繋がる可能性が高まることになる。そのためにも経営者、後継者が親子経営企業の真価を知ることはとても重要なことになる。

 では、今回は親子経営企業がその強みを活かし、真価を発揮すればどのようなことができ、どのように変化するのかということについてお話しする。

まず1つ目は「社長が変われば会社が変わる」ということ。これは、社長が代われば会社が変わるという組織論ではない。組織はトップが代われば良くも悪くも如何様にも変化する。大手一般企業は業績次第でトップの交代は必然として行われる。

一方、親子経営企業では業績不振だからと簡単に経営者を代えるということは現実としてあり得ない。出来の悪い後継者だから後退させろとは簡単には言えないし行えない。後継者自身が変わるしかない。

世の中のすべての後継者の出来がいいはずはない。後継者が経営者となるなら、己自身が自覚し変わるしかない。後継者は自ら身を正し、自らを律する。変わった後継者が会社を変える。それ以外に道は無い。

2つ目は「トップ営業が会社を救う」だ。親子経営企業のトップが自ら営業することの利点は多く、その成果は大きい。親子経営企業の取引先の多くが、親子経営企業であることが多い。経営者同士が知り合いであり、仲がとてもいいということがある。なかには、家族ぐるみの付き合いだという経営者たちがいる。

会社の規模が少し大きくなっていくにつれ、経営者が営業に直接出かけることが少なくなることがある。一日中、社長室にこもったきり出てこないなどという経営者もいたりする。何事も役員、社員に任せてしまっている経営者も結構いる。

なかには、業績が思わしくないにもかかわらず、相変わらず社長室にこもったままという経営者までいる始末だ。是非、今一度重い腰を上げ、経営者自ら営業に出て欲しいものだ。

3つ目は「守る・捨てる・変える」を実行することだ。世の中の代々続く老舗といわれる親子経営企業の多くが実践していることになる。守るべきものは守り、捨てるべきものは捨てる。そして、変えるべきところは変える。

いつの時代も企業を取り巻く外部環境は速い遅いはあれど、大きく変化する。その変化にあわせ企業自らも変化することで生き抜いてきた企業を老舗企業という。老舗企業に学ぶところは多くある。

4つ目は、「長期展望に立った経営戦略を描く」ことにある。昨今は時代の潮流が極端に速くなっている。それに伴い、企業のビジネスモデルの寿命が段々短くなっている。よって、企業が描く経営戦略はどうしても短期的展望に依らざるおえなくなっている。

親子経営企業も例外ではない。しかしながら、親子経営企業の持つミッションのひとつは「繋ぐ」にある。親から子へ、子から孫へとできることなら繋ごうとする。よって、長期的展望をベースに持ちながら短期的経営戦略を立てることになる。

最後は、「経営交代を企業の成長と発展の好機とする」ことだ。親子経営企業の親から子への経営交代は前述したように20~30年に巡ってくることになる。そのめったにない大きなイベントを折角なので企業の改革、革新の好機として捉えよう。

そのためには、後継者を計画的に育成し、事業承継をできるだけスムーズに行う必要がある。後継者だけでなく、継がせようとする経営者が己の出処進退を明確にし、譲ることへの覚悟をしなければならない。

 以上5つを実践することで、さらに親子経営企業の強みが増し、その真価を十分に発揮することになる。それぞれ5つのテーマについて後日改めて詳細に説明したいと考えている。