オンライン化のなかでオフラインを見直す

ビジネスコラム

 
 コロナ禍にあって私のような大企業でなく中小企業を顧客とした経営コンサルタントは受注を大幅に減らしている。なかには変わらず忙しいと思われる経営コンサルタントがいるのは承知したうえで書いている。私が知っている中堅経営コンサルタント会社も同じように大幅に受注を無くしている。この会社の顧客は上場大手企業がほとんどだった。
 
 かつては東京の一等地にある商業ビルの2フロアーを占めており、国内でもある分野ではトップシェアを有していたものだ。コロナ禍以前に業績の低迷、不振を聞かされていた。コロナ禍になり、一気に受注が激減したと聞いている。昨年末に長年馴染んでいた東京のオフィスを引き払い、なんとシェアオフィスに本社を移転したという。
 
 盛況時には200人近くいた社員が現在は30人にまで減らしている。日本の大手企業が経営コンサルタントに求める専門分野は時代と共に絶えず変化している。かつては日本企業の多くが生産部門の効率化、管理に経営コンサルの力を借りていた。この会社も企業の生産部門でのコストカットには定評があった。大量に安くそしていい物を作る技術が知らぬ間に国内から国外へと伝播した。
 
 国内の生産拠点が海外へ多くが移転したことが業績低迷の一因であった。そこにコロナ禍が追い打ちをかけた。オフィスの移転等で大きく固定経費を減らしたことでひと段落ついた模様だ。ただ今後は他の専門分野でのコンサル業務が課題となっている。聞くところによると人材育成、人材管理などに注力していくとのことだが決して簡単なことではないだろう。
 
 一方、私の顧客となる中小企業はというと、コロナ禍にあっても業績を落とすことなく乗り切れている企業とコロナ禍をまともに受けている企業とにはっきりと分かれている。私の顧客企業もちょうど半分半となっている。コロナ禍の初期に顧客企業には手元資金の確保をお願いしていた。どの企業も幸いなことに十分な手元資金が確保できていた。
 
 業績を維持できている企業は手元資金として借り入れた資金を使わずいつでも返済できる状況にある。一方の業績を大きく落としている企業は借り入れた資金を日々の運転資金として使っている。このままいくともう数か月で資金がショートするやもしれない。借入金のなかには5年間の返済猶予というのもある。いずれにしても手元資金の余裕がある間に月々の黒字を確保しなければならない。
 
 中小企業の多くがこのような状況にあるなか、私のような経営コンサルタントの需要がはたしてどれほどあるのかはなはだ疑問だ。私が経営者なら是非とも必要なコンサルタント以外は不要不急ということになる。顧客側の状況がこのような厳しい環境にあるなか、それでもコンサルタントが必要だと思われるようなコンサルティングでなければ需要はない。
 
 コロナ禍になり、猫も杓子もやれリモートだオンラインだと云う。我々経営コンサルも時代の波に逆らえず、リモートコンサルティング、オンラインセミナーで乗り切らねばという。本当にそれだけでいいのだろうか。今の若い経営者なら問題ないだろうが少し年配の中小企業経営者がリモート、オンライン化などの流れについてきているのだろうか。
 
 私自身が10年少し前まで事業経営者だった。そのころと今とでは相当環境が違っているのは間違いない。それでもあの頃取引のあった多くの経営者がみんなこの流れに付いてこられているのだろうかと不安である。1か月ほど前、電話でコンサルティングの問い合わせがあった。とりあえず一度お会いして話を聴いてからと言うと、コロナ禍なので後はメールでお願いするとのことだった。
 
 数日経って電話が鳴りFAXが動き始めた。その経営者からコンサルティングの質問事項が書かれていた。私はてっきりメールが来ると思っていたので驚いた。電話での感じでは70才を優に超えておられるように思えたのでオンラインで大丈夫かと心配していたのだ。高齢な社長なのでコロナ感染に敏感になっておられたようで、FAXで質問がきて思わず微笑んでしまった。
 
 私が危惧するところはもうひとつある。オンライン化を進めるなかで自分のコンサルティングの付加価値を下げてしまわないかということだ。リモートコンサルティング、オンラインセミナーの料金体系が大幅に下がっていないだろうか。顧客の満足度を考えると下げざるを得ないのでないかと考え下げてしまっていないだろうかということだ。
 
 オンライン化のなかでオフラインの良さをじっくり考えてみようと思っている。オンライン化すべきところはする方がいい。それでもどうしてもオンラインでは出せない良さがオフラインにはあるはずだ。これまでの現場での対面コンサルティングに磨きを掛け、セミナー、講演のレベルをさらに向上させておこうと思っている。