コロナウィルス禍、企業の処方箋

ビジネスコラム

 私の顧問先の業績が二極化している。相変わらず売り上げ利益とも好調に推移している企業がある。反して売り上げが前年同月を大きく下回り半分以下に落ち込んでいる企業がある。経営者の方の名誉のために言っておくが経営者の能力、資質が原因ではない。あくまでコロナウィルス禍の話である。
 
 今年2月ころコロナウィルスが日本で流行し始め半年が過ぎている。当初、顧問先には業績の良し悪しにかかわらず取り敢えず手元資金を厚くするよう助言していた。業績が好調な企業は手元資金を厚くすることで余裕と安心を得ることができた。業績を落としている企業は緊急融資を得て一息つくことができた。ただ半年が過ぎた今もコロナウィルスが終息する気配がなく先行きが見通せなくなっている。
 
 今日、4月から6月のGDP、年率27,8%減という速報値が出ている。コロナウィルス禍、世界中で人為的に経済を止めたことが原因である。2月ころには5月ゴールデンウィークが終わったころには終息しているかもと思ったものだが現実ははるかに厳しいものとなっている。このままでは来年以降も一進一退の状況ではと思われている。
 
 業界業種によっては売り上げが前年同月2,3割だというところがある。なかには売り上げがまったくないという会社まである。明らかに運不運が混在している。ただ間違いなく云えることがある。それはGDPがここまで落ち込むと、以前の規模に回復するには相当な時間がかかるということだ。
 
 業績が落ち込んでいる企業で云うなら、以前の業績に戻すことは容易でないということだ。企業業績は時間が経てば回復するというものではない。企業を取り巻く様々な環境が時間の経過とともに変化していく。世界の経済動向、世界の政治動向などが大きく変化されると予想される。それに伴い日本の政治状況、経済状況が変化する。
 
 その変化の中で企業は生き残りをかけて経営されていくことになる。多くの企業が売り上げを落とし金融負債が増えているだろう。当初は緊急融資で凌げていたがさらに追加融資が必要となるだろう。企業によっては追加融資が受けられず倒産するところが出てくる。上手く追加融資が得られた企業でも売り上げが回復するめどが立たず苦しむことになる。
 
 ここで経営者が打つ手立ては事業を見直し見極め、再構築すること。なかには事業の継続の是非、法的整理まで考えておかねばならない企業もあるだろう。まさに背水の陣を敷いての経営となる。方向性が決まれば後は行動するのみ。そこで必要となるのがお金だ。攻めるも引くも資金が必要だ。
 
 ここでも手元資金が要る。会社所有の土地、建物、機械設備等の資産、株式などの有価証券、在庫商品など現金化できるものをひとつひとつ現金化していく。会社が倒産してしまったら元も子もない。ありとあらゆるものを現金化して少しでも多く手元資金を確保しておく。金融機関への返済は一番後回しでいい。
 
 売り上げを上げる。利益を上げる。手元資金を確保する。当たり前のことだがこれが生き残るための企業の処方箋になる。経営者が慌てふためくことなく腹を据えて危機に臨むことが大事だ。目先の損益に捉われることなく、まずは手元資金の確保を優先させる。その先に未来のビジネスモデルが存在する。