企業の新卒採用と中途採用を考える

2023.10.25 ビジネスコラム

先日、顧問先からの依頼で中途社員研修を行った。２０代が２人、３０代が２人、６０代が２人の計６名での研修だった。みんな社会人経験者なので私から改めて社会人とは会社員とはなどと御託を並べることもなかろうと思い、いくつかのテーマでそれぞれに話してもらうことにした。

各人各様の社会人経験があり、いろんな会社でのそれぞれの就業経験があり、それぞれの話がとても面白く興味深いものだった。参加者も各人の話に聞き入っている様子だった。各世代それぞれに違った社会環境で育ち、各自が独自の人生経験と価値観を持って今ここにいる。

そんな６人の人生がこの会社に入社することで交差することになる。互いにご縁があるなら長くこの会社にとどまり好反応を起こしてくれるだろう。会社は２か月の研修期間を経て彼らに即戦力としての働きを望んでいる。彼らはそれぞれ違う事情を抱え、いろいろな想いと考えを持ち入社する。

もう一方でこの春から違う顧問先の依頼で３人の大卒新入社員の研修を引き受けている。４月から８月までの予定が９月以降来春まで延長することになった。理由はいくつかある。一つは、久しぶりの新入社員ということで先輩社員との力量の差が大きく今しばらく別枠で育成して欲しいということだ。

もうひとつの理由は新入社員をゼロから育てる土壌、システムが会社に備わっていないということになる。各新入社員にそれぞれ育成担当の先輩社員を付けてはいる。育成担当の先輩社員の育成指導者としての適性、あるいは担当者と新入社員の相性などが上手くかみ合わないことから機能不全状態となっている。

この会社では新入社員に９月から売り上げでなく利益のノルマが課せられている。３人ともまだ誰も売り上げをあげられていない。研修では９月から実践につながる営業研修に切り替えている。新卒新入社員が１日でも早く売り上げがあげられるよう各自に寄り添った指導を心掛けている。

今回たまたま顧問先企業の要望で中途採用社員研修と新卒新入社員研修をやらせてもらったことでいろいろ考えさせられることになる。中途採用社員は個性が顕著に表れており、得意不得意が結構明確に分かる。企業風土、経営者の経営姿勢、上司や同僚との相性などがマッチすれば即戦力となる。

更に上手くいけば企業内に新風を吹き入れ職場の活性化になることがある。一方で、中途採用者は以前の職場の慣習や習慣が抜けず新しい職場になじめず早期に離職することが多い。また前職での成功、失敗が無意識に影響を与えることになり早く結果を出そうとするあまり何事にも空回りを起こし思うような結果を出せないことがある。

受け入れる企業側は中途採用者が新しい職場に早くなじめるよう、またその才能や能力を十分に発揮できるよう経営者はじめ上司などが常に意識し注視してやる必要がある。できれば上司などがメンターとなり近く寄り添うことが大事だろう。せっかく入社した人材を大切に活かしたいものだ。

新卒新入社員は育てるのに大変な時間と手間が掛かる。社会人として企業で第一歩を踏ませることになるので企業には大きな社会的責任が生じる。企業は人を育てることでその社会的責任を果たしているといっても過言ではない。そういう意味でも企業は社会の公器と言われるのだろう。

最近、企業によっては新卒新入社員をあえて採用しないところが増えている。特に中小企業にとって新卒は得難いものでかつ育てにくいと思われている。実際募集をかけても中小企業に優秀な人材が集まることはなく採用活動にかけた時間と経費が無駄になっていることが多い。ならば即戦力と期待できる中途採用社員の雇用に注力しようというのだ。

企業は本来、人あっての企業だ。長く経営をし続けることができている企業は社員を大事にしているところが多い。言い方を変えれば、人を育てるのが上手な会社が長く経営し続けることができている。要は新卒、中途にかかわらず社員となったからには全力で育て上げるシステムができている企業なのだ。

新卒採用、中途採用どちらも企業にとって一長一短はあるものの将来の企業を支える貴重な人材となる可能性があることは間違いがない。手間と時間を惜しまず辛抱強く育て上げるにしくはない。

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