親子経営 後継者の帰郷そして入社

ビジネスコラム

後継者の帰郷そして入社
 
 足掛け6年間、月に一度のペースで私のところに来ていた経営塾の塾生がこの度2年間のビジネススクールを終え父親が経営する会社に入社するため故郷へ帰っていきました。彼は私の友人の子息で友人の会社の後継者です。

大学卒業と同時に父親の会社の取引先へいわゆる丁稚奉公として勤務していました。当初、5年間務めるはずでしたが、3年で終わらせてもらい、私の勧めで2年間ビジネススクールに通っていました。

彼のようなケースでは、迎える会社からすれば顧客の子息を預かる訳ですから、お客さん扱いをし、一般の新入社員とは一線を引かれることが往々にして起こります。よって、与えられる業務は営業第一線ではなく後方支援に就かされることになります。

本人からすれば物足りなさを感じたり、同期の他の新入社員たちを見ては疎外感を感じたりします。本人は父親の会社に帰るまでできる限りいろんなことを学んで帰りたいと思っています。

そんな彼の想いと、受け入れる会社との思惑が大きく違っていました。当初、生き生きと仕事に向かっていた彼がいつしか元気を失くしていました。

父親は息子に大きな会社でサラリーマンとしていろんな経験をしてきて欲しいと思って送り出しています。息子はそんな父親の期待に応えようと、就職先で一生懸命仕事を覚えようと頑張ります。しかし、会社ではそのうち彼は父親の会社に帰る子だからと扱われてしまいます。

彼の同期たちはすぐに会社に馴染んでいるように彼には見えます。それは当然の話です。彼の同期たちは彼と違って、その会社にこれからの人生を賭けることになるわけです。帰る会社がある彼とは条件が本から違います。

そんな彼から先輩や同期の社員を観ると、少しずつ違和感のようなものが湧いてきます。どうして?なぜ?と彼らの言動に理解できないところが出てきます。彼らはその会社で出来れば定年まで働きたいと思っています。そして少しでも高いポジションに就いて少しでも多い給与を貰いたいと考えています。

一方、彼はあくまでも継ぐべき会社がある後継者です。彼らにとって彼はまるで異星から来た宇宙人のようなものです。

会社の後継者が父親の会社に入るまでに父親の会社の取引先で、彼のように面倒を見てもらうというケースは結構聞かれます。このような場合、後継者が素直で真面目であればあるほど彼と同じような体験をすることになります。鷹揚で大雑把な後継者であれば、気楽にサラリーマン生活を楽しんで帰ってくるだけの話です。

いずれにしても折角父親の会社に入社するまでに他社をサラリーマンとして経験、体験できるのですから、この機会を是非有効に過ごしてもらいたいと思います。大手企業の長所と短所を身を以て経験できるのですから素晴らしいことです。

他社を見て自社を省みることが出来る貴重な経験だと思います。私の塾生は3年間の丁稚奉公を終えたのちビジネススクールに2年間通いました。ビジネススクールで学んだこともこれからの人生できっと活かされることがあります。

後継者は継ぐべき会社に帰ってからが本番です。私の塾生はこれから父親の会社に後継者という立場で入社します。彼を多くの社員たちが迎えます。またこれから彼の後継者としての人生が始まります。誰しも人は自分の人生を自分で切り拓いていくものです。

彼のこれからの長い経営者としての道のりに幸あれと願うばかりです。