試算表よもやま話

ビジネスコラム

私は顧問業務、コンサル業務にかかわらず月一回の顧問先訪問を基本としている。さらに訪問時には必ず最新の試算表を用意してもらって経営者、あるいは後継者と面談をしている。彼らも月一回私が訪問するときに自社の試算表をじっくりみることになり習慣化している。

月一回私と自社の前月の試算表をみることで自社の現在の在り様が一目瞭然となる。先月どれだけの売り上げがあり、利益がどれぐらい上がり、どこにどのようにお金を使ったかなど誰に聞かずとも見るだけですべてが表示されている。経営者にとっては自分の成績表がそこにくっきりと表れているのだから言い訳のしようがない。

またまだ経営を引き継いでいない後継者にとっては試算表を見ることで現在の会社の状況がいいも悪いもすべてタイムリーに分かることになる。そのことで後継者が今すべきことが明確になり将来への準備ができることになる。なにしろ自社の現在の姿がそこに現れているのだから後継者には考えることが多くできるのは当然のことだ。

こんな話をすると、経営者が毎月試算表を見るのは当たり前のことだと言われるだろう。しかしながら私の経験からすると経営者が意外と試算表を見ていないとうことを知っている。かく言う私自身以前100億円の売り上げを超す会社を経営していながら毎月は見ていなかった。まったく恥じ入るばかりだ。

以前経営していた会社は建設資材の販売会社だった。私が引き継いだころは2か月遅れでないと試算表ができてこない状況だった。経理の責任者に催促するといつも営業の誰それが売上伝票を書いてくれていないとかいろんな言い訳が返ってきたものだ。うるさく毎月指摘することでようやく翌月に試算表が出てくるようになった。

それでも今思い返してみると私は自社の試算表をゆっくりじっくりと見たことがなかった。今ほど経理の知識が無かったこともあるが、なにより試算表の意味、価値など経営者が試算表を見ることの大切さを当時の私はまずもって理解できていなかった。とにかくいつも売り上げだけを気にしていたものだ。

そんな私が今おこがましくも顧問先の経営者や後継者に試算表を早く正確に作ることの大切さや試算表を毎月見ることの大事さを伝えている。会社経営に失敗した経験を持つ私だからこそ今、顧問先経営者、後継者に真顔で真剣に毎月試算表を見ながらいろんなことを話すことができている。

私の次女夫婦は会社を経営している。以前も書いたが娘婿がスポーツビジネス、次女が不動産ビジネスをしている。社員はいないがそれぞれの事業部にビジネスパートナーとして仲間がいる。それぞれチームとして業務をこなしている。規模はまだ小さいけれど業績は確実に上がっている。

ただ残念なことに経理業務が上手くできていない。経理専門の社員がいないだけでなく経理業務のシステムがしっかりと構築されていないので毎月の締めが確実に行われていない。よって試算表も作られていない。銀行残高をみながらあとは勘を頼りに経営をしているようなものだ。

先日も次女が「お父さん、毎月のお金の流れが分からないからこわい」と言っていた。私は「だから一日も早く経理業務のシステム構築をしなさい。顧問税理士事務所とよく相談をして毎月先月の試算表が見れるよう早くしなさい。そうすることでキャッシュの流れをしっかり掴んでおきなさい」とだけ言っておいた。

岐阜に私がもう5年くらい顧問をしている会社がある。経営者は2代目社長になる。後継者が2人おり兄弟とも今年に入社している。兄が3年、弟が1年他社で仕事をしてきてからの入社である。兄の方は大学院の2年間、東京の私の事務所で月に1回個人セッションを行い後継者としての指導をしてきた。

月1度の岐阜本社訪問は午前10時に入り、午前中に後継者二人に試算表を見ながらセッションを行っている。二人ともまだ経理の知識が乏しいので財務諸表の見かたから教え始めている。日々の社員の業務のひとつひとつがこの試算表に現れているのだというと興味深そうに見入っている。

午後から父親である社長と同じように試算表を見ながら話をしている。経営者である社長とは経営全般に亘る諸問題の相談に乗っている。特に試算表を見ながら月々のキャッシュの動きに注意している。私自身が資金繰りで苦労したのでどうしてもキャッシュの流れに目がいってしまうのは仕方ない。

あと何年かすると後継者に経営を譲ることになる。それまでに後継者の二人には経営全般が分かるようになるよう指導していきたいと思っている。幸い兄弟の関係性は悪くなく弟が兄を支えることになんら支障がない。彼ら二人が経営者となって上手く事業が継続できるよう微力ながら応援したいと思う。

 

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