父と子の関係性が厄介なのには理由がある

ビジネスコラム

 親子経営コンサルタントの看板を掲げた7年ほど前、今思えばしばしば相談の電話がよく掛かっていた。父親が息子の面倒を見て欲しいという電話より、どちらかと言えば息子さんが父親と上手くいっていないという電話の方がとても多かったのを覚えている。なかには息子さんの奥さんから泣くような声で義父と夫との関係をなんとかして欲しいというのもあった。
 
 その頃よく掛かった息子さんたちからの電話は悲壮感が半端なく漂っていた。まるで駆け込み寺に助けを求めるかのような切羽詰まった観が見受けられるケースもあった。経営者である父親がとても横暴で独善的でワンマンだというのが多かった。後継者である息子さんの意見をまるで聴かない。聴かないだけでなく文句があるならいつでも出ていけと言う。
 
 こういう頑固親父の話は結構聞くものだ。それでもそいうケースでは母親が息子と父親の間に入って上手く取りなしていることがある。私のところに相談に来るケースでは頑固親父に母親が何も言えない、言えないどころかいつも父親と一緒になって息子をなじるというのまである。これでは息子さんの立つ瀬がなく居り場が無くなってしまう。
 
 当時は電話だけでの相談が多かったので具体的な支援、対応策を取ることができず心配だけが残ったものだ。また、息子さんからの一方的な話なので客観的な判断ができず微妙な親子の関係性を理解するまでに至らなかった。それでも相談者の息子さんたちに必ず言っていたことがある。ひとつは、父親を変えようとは思うなということ。それはどうしても無理なことだということ。
 
 もうひとつは、父親との適度な距離感を保って欲しいということ。この距離感というのは実際の物理的距離感とともに精神的な距離感のことだ。なかには父親と同居し、尚且つ仕事場も自宅だというケースがある。この場合、距離感をどう保つか、より具体的に考えて欲しいと話した。場合によっては家を出ることも考える必要があると申し上げたことがある。
 
 親子の関係は昔から厄介なものと相場が決まっている。特に父と子というのは難しい。父と息子だけでなく父と娘も実は結構難しい。ごく普通の一般家庭でも親子関係で悩んでおられる人たちは多い。まして父親が会社をを経営していたり、家業として何か事業をしていたりすると、父と子の関係はさらに厄介で難しくなるものだ。
 
 父と子の関係では馬が合う合わないということは当然あることだ。ただ、それだけでは確執が生じるまでには至らない。父と子の間に確執ができる理由、原因はいろいろ考えられる。父親が子供を自分の思うように支配しようとする。子供は自分の分身であり別人格だと認められない。父親は子供への愛情の見返りに父親への感謝を求めようとする。
 
 一方、子供は父親に無条件と言っていいほどに、当たり前のこととして父親に反発する。父親のあらゆる言動が子供には理解できず不信感を抱いてしまう。父と子はまるで磁石が反発し合うように反応し合う。最近ふと思ってしまう。人は血縁関係が近いほど、血が濃いほど愛憎がともにより深く激しくなるような気がしている。
 
 さらに、父と子の関係を厄介にしていることがある。それは父から子へ継がせる物があることだ。資産、財産といった物であり会社もそのひとつだ。継がせようとする物があるから父は子に干渉しようとする。心配もするが感謝をさせようともする。子供からすると継ぐ物があることはありがたいことであると同時に厄介事を継ぐことにもなる。
 
 親子経営コンサルタントと称して親子経営企業のお手伝いをしている私に言わせるなら、親子の関係は非常に厄介で複雑で難しいものだが、親子の関係性を改善させ企業を上手く承継できたなら得ることのできる果実はとても大きなものだ。親子経営企業ならではの強みはたくさんある。この強みをさらに強めることで強固な基盤を持つ優良、有望企業が育つことになる。
 
 最後に、父親との関係で悩んでいる息子さんにもうひとつ言うなら。ご自分の言動を少し変えてみて欲しいということだ。たとえば「ありがとう」の一言。「おはようございます」で始まる一日。そんな些細な少しの言動が変わることで廻りの人たちとの関係性が変わる。その変化がいつしか、そしていずれか父親との関係性まで変えているかもしれない。