悲喜こもごもビジネス交渉事情

ビジネスコラム

私の次女は不動産エージェントとして夫と二人で会社経営をしている。娘婿はスポーツビジネス、特にプロゴルファーのサポート業務を幅広く行っている。ということで娘たち夫婦の会社の事業は不動産事業部とスポーツビジネス事業部に分かれており次女と娘婿がそれぞれの事業を担当している。

元々は娘婿が一人でスポーツビジネスの会社を経営していた。結婚後次女が不動産の仕事をやり始め夫の会社の不動産事業部として業務を行い現在に至っている。一昨年次女も代表取締役となり夫とともに共同代表となっている。夫婦それぞれが各自に仕事をしているが財布は一つというところだ。

いまのところどちらのビジネスも悪くはないようだ。ともに正社員はいないが外部のビジネスパートナーとなる仲間たちと上手く仕事ができている。特に次女の方は5,6人のチームで不動産ビジネスを廻している。メンバーそれぞれが会社経営者であったり個人事業主で、次女を中心としたチームを組んでひとつひとつの不動産案件をこなしている。

次女は文字通りチームで働くを実践している。当初はチームが上手く機能しなく次女がよく悩んでいたものだ。今はメンバー各自が各自の役割と責任が明確になりチームとして上手く動き始めているようだ。次女のチームリーダーとしてのリーダーシップのあり方、加減がメンバーには心地いいのかもしれない。

次女は父親の私が言うのもおこがましいが、美人で可愛い女性だと思う。しかし内面は男以上に男らしく男気がある。チームのメンバーにはひとりひとりに細やかな心使いをしている。それでいてどんなトラブルがあっても逃げずにひとりで引き受けている。そんな次女をメンバーが心から信頼して頼りにしている。

私は次女のそんな仕事ぶりを心配ではあるけれど頼もしく微笑みながら眺めている。時たま次女からお父さんあのねと相談が来る。ほとんどの相談の答えは次女自身が持っている。私に話すことで確認をしたいのだと思う。毎日暇にしている父親へ気遣って相談しているのだろう。

先日、次女から相談がきた。海外に住む顧客からの売却依頼なのだが、金融機関と任意売却の交渉が必要だという。次女にとっては初めてのケースだ。やるべきことは分かっているのだけれど初めてのことなので不安だったのだろう。次女は必要以上に顧客の個人的事情に踏み込んでしまい感情を露わにすることがある。

不動産の任意売却は金融機関次第であり担当者の思惑もある。こちらでいろいろと考えても仕方ないことが多い。よって正面から担当者と腹を割って次女が交渉する以外にない。担当者と会う前からあれこれと心配しても仕方ない。次女と担当者の交渉次第、互いの思惑次第、そして二人の相性と縁次第で物事が決まっていく。

だからあれこれ悩まず金融機関の担当者とまず早急に会いなさい。私から次女へのアドバイスはこのようなものだった。じつは今日次女が担当者と会うことになっている。これまでの事情を考えてみるとおそらく話は上手く進むだろうと思っている。あとは次女の運次第ということになる。

一方の娘婿殿はスポーツビジネスをやり始めて20年は過ぎるだろう。当初はゴルフショップの経営をしていたようだ。その後プロゴルファーのマネジャーをし、現在はマネジメント業務とプロゴルファーにスポンサーを付ける業務を主にしている。ずっと一人でやってきたようだが最近ビジネスパートナーに恵まれ相談相手ができている。

先日、我が家での食卓での会話のなかで取引会社との業務提携が上手く機能せず悩んでいるようだった。その会社との話は以前から聞いており、この1年は折に触れ私からもアドバイスをしてきた。私のアドバイスはその会社との取引そのものを見直せというものだった。

その会社との取引内容、取引条件などが相手側に有利なもので娘婿にとってはあまり利益にならないものだった。その会社との取引には娘婿の時間と手間が相当かかっている。それに見合うだけのメリットが娘婿になく、そのことが娘婿にとって大きなストレスとなっていた。

私はその日たまたま『トランプの真実』(ダイレクト出版)という本を読んでいた。その冒頭あたりにトランプ大統領が就任早々不公正な貿易協定が米国経済の足を引っ張っているとして北米自由貿易協定(NAFTA)からの離脱を表明したとあった。早速各著名人は一斉にトランプ大統領を批判し始めた。

アメリカとメキシコ、カナダとの関係を大きく破壊したと当初批判されたものの、メキシコとカナダが却って大慌てとなり再交渉の結果、新たな貿易協定(USMCA)が急遽結ばれた。加盟3か国にとって前よりもいいものになったと当時のメキシコ外相に言わしめる協定となった。

私は娘婿にこのトランプ大統領の交渉術について話した。トランプ大統領は政治家以前に優れたビジネスマンなんだと。不利な取引を一旦白紙に戻すことで再交渉の機会が訪れ互いにメリットのある取引とすることができるというひとつの例だとして話した。だから娘婿の取引も同じように一旦白紙に戻してはどうかとアドバイスしたのだ。

その後、娘婿は取引先に一旦取引を白紙に戻すことを申し入れたという。相手は青天の霹靂とでもいうような反応をしたらしい。それでもボールはいま取引先にある。どのようなボールが返ってくるか非常に楽しみではある。私としてはその取引先との付き合いは無くなってもいいのではと思っている。

 

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