親子経営 中国古典『大学』がビジネスに効く訳

ビジネスコラム

親子経営 中国古典『大学』がビジネスに効く訳

 私が小学生の頃、校庭の植木の傍に小さな男の子が薪を背負い片手に本を持ちながら歩く姿の銅像が置いてありました。今も多くの小学校の校庭の片隅に置き忘れられたかのようにこの少年の銅像が置かれています。

 私たちの頃はその少年が二宮金次郎といい後の二宮尊徳の像であることを教えられていました。今の子供たちはその少年の像が誰であるのか、なぜ校庭の片隅に置かれているのかなど先生が教えることもなく何も知らぬままに卒業しています。

 さてその少年が片手に持ち一生懸命に読みふけっている本が実は『大学』でした。私自身がそのことを知ったのはつい最近のことです。中国古典『大学』は四書といわれる『大学』『論語』『孟子』『中庸』の初めに学ぶ本と言われています。

 初めに学ぶべき本だから儒教の入門書かというとそうではなく、儒教の概論書ともいうべき内容になっているといえます。儒教とはなにか、儒教が教えることとはなにかといった根本のところを伝えているのが『大学』になります。

 『大学』の作者、編纂者、制作年代は定かではありません。言われているのは、漢の武帝の時代紀元前136年に大学が設置されており、『大学』の成立はその頃が有力ではないかということです。

 その後、南宋の時代、朱子により四書『大学』『論語』『孟子』『中庸』として確立されました。日本には朱子学として伝来し特に江戸時代幕府の庇護の下儒教が広く全国に伝播していきました。

 幕府においては昌平坂学問所、各藩ではそれぞれの藩校において儒教が熱心に学ばれていました。また庶民も寺子屋や私塾において子供から大人まで四書が広く読まれていました。

 『大学』の教えるところの根本理念が「修己治人」になります。人の上に立つ者にとってまずすることがあります。それはまず自分自身を厳しく律し己を修めることだといいます。

 人の上に立つ者はなによりもまず己の身を正すことから始めるのが原則だということです。そうして初めてリーダーとして人の上に立つことができるのだと言っています。『大学』では執拗なほどこのことが延々と述べられています。

 昨今日常茶飯事のように起こる企業不祥事の原因がまさにここにあります。すべからく企業のトップの経営姿勢に問題の原因があると言えます。企業のトップが人の上に立つ者として己の身を正せていたのかが問われるところです。

 人の上に立つ者としての自覚が無く己に甘く他人に厳しかったり、己に甘く他人も甘やかせていたり、そうした者が人の上に立つことによって起こる様々な問題が企業不祥事として起こっているとしか思えません。

 経営者のみならず人の上に立つすべてのビジネスリーダーに最も必要なことはなによりもまず己の身を正せということになります。そうして初めて人の上に立つ資格ができるのだということです。

 企業は頭から腐るとも言われます。すべての企業、組織はトップ次第で良くも悪くもなります。トップの器量が問われ人格が問われるのは当然のことです。それを知らず安易に人の上に立つ者が多くの問題を引き起こしています。

 経営者、後継者そしてすべてのビジネスリーダーに中国古典『大学』を是非学んで欲しいと思う所以がここにあります。人の上にどうすれば立たせてもらえるのかを是非学んで欲しいと心から願うところです。

 この続きは是非、拙著『親子経営 中国古典『大学』から学ぶ32の成功法則』(セルバ出版)にてお読み頂ければ嬉しく思います。