親子経営 兄と弟がまた難しい

ビジネスコラム

親子経営 兄と弟がまた難しい

 同族経営の会社において親子の関係が良好であるかどうかがひとつ大きな課題であるのは間違いありません。さらに言うなら経営者の兄弟関係そして後継者の兄弟関係がどうであるのかということがもうひとつ大きな経営上の問題となります。

 父と子の関係性がとても複雑なものであることはすでに幾度も書いてきました。今回はそれと同じようにあるいはもっとさらに父と子の関係性より複雑な様相を呈することが多い兄と弟の関係性について書こうと思います。

 これら父と子、兄と弟それぞれの関係性は一概にこうだと言えるものではないのが事実ですが、大概はこうであると言えるのもまた事実です。個別のケースはそれぞれ違った事情があり複雑ですが、概してこういうケースだと言えるのも現実としてあるわけです。

 ギリシア神話の世界ではエディプスコンプレックスの語源となったエディプスと父との葛藤が描かれ、旧約聖書ではカインとアベルの兄弟の葛藤が描かれています。このように我々人類にとって父と子、兄と弟との確執は如何ともしがたい永遠のテーマでもあります。

 みなさんそれぞれの周りを見回してみてください。父と子の仲が良いというケースがとても少ないと思われませんか。同時に兄と弟の仲が上手くいっているというケースもまた驚くほど少ないということに気が付くのではないでしょうか。

 兄弟の場合、多いのは小さいときは本当に仲のいい兄弟であったのが、成人しそれぞれに仕事を持つとあまり交流をしなくなったということが聞かれます。そしてそれぞれが結婚をしてそれぞれに家庭を持つとその関係がさらに希薄になったという話、よく聞かれるようになります。

 そのような関係性にある兄弟が父親の経営する同じ会社で仕事をし始めるわけですから、事が面倒になるのは端から目に見えているといっても過言ではありません。さらに父親から事業と財産を相続することになりますから、話はさらに複雑にならざるを得ないわけです。

 親子経営コンサルタントとして経営現場に出向きますとそれこそいろんなケースに出会います。どうしてここまで親子の関係、兄弟の関係が不自然に思われるまでこじれてしまったのだろうと唖然とすることがしばしばあります。

 それらのなかでいくつかケースを挙げますと、ひとつは父親に問題がある場合があります。父親が自らの出処進退を明らかにすること無く、いつまでも経営をし続けようとしていることがあります。

 そのうえ息子二人を会社に入れておきながら。いつまでたってもどちらを後継者にするのかを明らかにしないことがあります。これなどは父親自らが息子たちを競わせ争わせていることになります。ロッテなどは正にこのケースになります。

 もうひとつよくあるケースは、兄弟二人が父親の会社に入社したものの、どうも兄より弟の方が何かにつけ能力が高そうだという場合があります。能力に勝る弟が兄を立てて兄を補佐するということができれば何も問題は起こりません。

 得てしてこの場合、何かにつけ優秀な弟というのは段々と凡庸な兄を疎ましく思ってきます。自分の方が出来るのが分かっていながら父親が兄を当然の如く後継者として見ていることに段々と我慢ができなくなってくるのです。

 兄弟間のいざこざが起こる多くがこのケースです。一つの会社に二人のトップはあり得ません。あくまでも会社のトップはひとりが原則です。両雄並び立たずというのが現実としてあります。

 このように兄弟を父親の会社に入れたことで起こる問題は他にもいろいろとあります。どのように問題を解決すればいいのかは、それぞれのケースによって当然違うことになります。今後少しずつ様々なケースについて考察していきたいと考えています。

 敢えてひとつだけ言うとするなら、兄、兄たらしく、弟、弟たらしくということでしょうか。まずは兄が兄として弟を慈しむことができるなら、弟が弟として兄を敬うことができるということでしょう。

 兄弟関係も人間関係ですから相対関係です。まず兄が弟を慈しみ可愛がることです。その兄の気持ちに弟が兄を敬うことで応えます。この繰り返しが兄弟の関係性を改善する最も身近で確実な方法と言えます。